「三色のバンダナ」と一緒に「HEY!」に掲載した話です。
 この話は根底では前作と繋がっていて、私の続きもの大好き心理がよく分かりますね(笑)。
 題名は「夫婦喧嘩は犬も喰わない」という諺からとったものです(オイ)。…そのまんまですね(苦笑)。
 話のコンセプトとしてはズバリ!「亭主関白な夫(天化)と耐え忍ぶ妻(道徳)」です(笑)。それなのに妻は攻野郎って…。
 私的にはコンセプトには添っていない気が致しますが。
 Hシーンと道徳の気障な台詞に、前に書いた時も今回手直しした時も意識が遠退いた一品です(笑)。
犬も喰えないW犬も喰えないW犬も喰えないW犬も喰えないW犬も喰えないW   Implication(封神演技)Implication(封神演技)Implication(封神演技)Implication(封神演技)Implication(封神演技)Implication(封神演技)
 先刻の天化の様子からして、勘弁してくれるつもりは毛頭ないだろう。今夜は本当に日干しになるかも知れない。 
「滅相もない。お前に不満なんてある筈ないだろう?そんな事を言って私を困らせないでくれ。……おいで」
 
 道徳が手招きしてやると、一旦離れていた肢体が腕の中にすっぽり収まってくる。たったこれだけのことで、もう機嫌が良くな
 
ったらしい。嬉しそうに猫の子のように頭を摺り寄せてきた。少年からの接吻を受けて細い腰を引き寄せると、天化はすんなりと
 
道徳の膝に腰を下ろす。
 
 抱きしめて応えたものの、横座りしている体勢が気に入らないのか、不満げに唸る。身体の向きを変えて背中から抱え込んでも
 
違うと首を横に振った。道徳は少し考えてから今度は胡坐をかいて、その上に向き合うように座らせると、天化は早速背に腕を回
 
して身体を密着させてきた。
 
「これがいいのかい?」
 
「そ、こうしたら師父のこと抱き締められるっしょ?」
 
「…………」
 
「……なに黙ってるさ!?こんな時は一言返してくんねぇと、俺っちが恥ずかしいさ」
 
 きょとんとした顔で自分を見下ろしてくる道徳の視線から逃れるように、天化は頬を赤く染めて胸を小突く。道徳は天化のそん
 
な様子を知ってか知らずか、照れ隠しに頬をぽりぽり掻いて瞳をあらぬ方向に泳がせた。
 
 今の二人は誰から見てもこっけいに映るだろう。しかし、妙にほのぼのとして可愛らしい光景だった。
 
「……いやぁ…そのう…………あんまり嬉しいこと言ってくれるから………」
 
「俺っちはいつも師父に嬉しいこと(もとい恥ずかしいこと)言ってもらってるかんね。少しは学習してるさ」
 
「そんな事を学習するよりも、修行を頑張りなさい。今日も薬丹の課題をしていなかったろう」
 
 照れ隠しに修行の話を持ち出す道徳に対して、天化はしれっとした顔で反省の色もなくきり返す。
 
「明日するつもりだったんさ」
 
 道徳が更に口を開こうとする気勢を制し、どこか艶やかながら悪戯っぽい笑みを湛えて見上げてきた。
 
「……それよりもこのまま誤魔化すなんてこたないさね?」
 
 小首を傾げて覗き込んでくる仕草とは裏腹に、碧眼は容赦のない光を放っている。
 
 家出中にさせるべく置いておいて課題の話をふっておいて、煙にまいてしまおうという作戦は、どうやら見事に読まれていたら
 
しい。太公望達と一緒に居たせいか、悪知恵まで発達したようだ。道徳は今度こそ諦めることにして、小さく息を吐いた。
 
 こういう関係に落ち着いて、もう十年になるからか、天化の様子は心得たものだった。そのくせ、始めてしまうとひどく恥ずか
 
しがったり、物慣れない仕草をしたりして、初々しい一面も見せてくる。
 
 軽く肩に羽織った夜着から天化のしなやかな肢体が見え隠れする。深い接吻に応えながら、自分を受け入れるべきところにそっ
 
と触れてみた。びくりと身を震わせた天化の背を落ち着かせるように撫でてやり、尚も探り続ける。幾度も肌を重ねた為か、そこ
 
は既に濡れそぼり物欲しげにひくついていた。
 
「……は、あ…うぅん」
 
 指の付け根まで入れて緩く動かすと、湿った音が室内に響く。項に口付けを落として胸元の突起に悪戯を仕掛けると、甘い吐息
 
を零して背を仰け反らせた。するりと入り込んだ指の具合からみて、すぐにでも受け入れられそうに思えた。
 
 内部はとても熱く、軽く動かすだけで指を伝うほどの雫が零れてくる。
 
「……もう、いいね?こんなだし……」
 
 指で探られる度に足が震え、もどかしい甘い疼きが身体中を駆け巡った。道徳を知っているだけに、彼が欲しくて堪らなくなる。
 
 耳朶を軽く噛みながら吹き込まれた囁きに、何度も頷いてしまうほどに。
 
「うん……早く………」
 
 指を数本入れただけで天化自身は緩く勃ち上がり、息を乱して求めてきた。それに応えて天化のほっそりした腰を掴んで持ち上
 
げ、自身をゆっくりと埋め込んでゆく。
 
「……はあ…ぁ…師父」
 
 一瞬強張った身体は、大きく息を吐いた少年の動きに伴って柔らかく蕩け、道徳を受け入れた。敷布に膝を付き、深々と飲み込
 
んだそれの存在を確かめるように内壁が僅かに狭められる。
 
 その刺激に内部から圧迫するものが一段と力を増したように、存在感が大きくなった。
 
 道徳がゆっくりと感じる部分を突いてくると、天化は堪らず腰を揺らめかせる。
 
「………あ!……んぅ…」
 
 肩に軽く羽織っていただけの天化の夜着は滑り落ちて白い塊と化し、暗い床とは対照的にひどく目立った。
 
 自ら腰を揺らし、道徳の胸に額を押し付け、首に腕を巻いてしがみ付いてくる。半開きになった唇に自分のそれを押し当てると、
 
舌を絡めて積極的に快楽を受け入れようとする。
 
 敷布についた爪先は動く度に痺れたように痙攣し、白い布に新たな皺を刻みつけた。
 
「……ふぅ……は…やぁ…師父も……」
 
「うん?私がどうだって?」
 
 背中に爪を立てられ、道徳は僅かに苦笑しながら天化に続きを促してやる。
 
「あ……コ、師父も……動いて…さ」
 
「楽をさせて貰いたいんだが、駄目かな?」
 
「………ダメ」
 
 瞳を熱に浮かされたように潤ませ、上気した頬や肌が例えようもなく色っぽく、自分を誘ってくる。微かに額に滲んだ汗と、爪
 
を立てねば縋りつけない背中の状態で、己の状況がどうなのか道徳にも分かっていた。どんなに上辺を取り繕っていても、天化を
 
求める自分自身が一番正直だった。もったいぶった態度とは裏腹に、天化の言葉を待ち望んでいたのだ。
 
 ただ、楽をしたいという点も本音の一つではあるのだが。
 
「……ふむ、では遠慮なく…」
 
 道徳は天化の望み通り、少年に合わせて突き上げ始めると、途端に白い背が弧を描いた。
 
「ああん!い……いい…もっと…」
 
「…ほら……もっと自分で動いて……」
 
 耳元に吹き入れられる厚い吐息まじりの囁きに、天化はイヤイヤするように首を横に振った。ただ単に嫌なのではなく、ついで
 
に加えられた首筋や耳への愛撫に無意識に逃れようとしたのだろう。そして、他にも理由はあった。快楽と羞恥に全身をほの赤く
 
染め、天化は道徳の視線から逃れるように身体を捻って消え入りそうな声で呟く。
 
「は、恥ずかしいさ……そんな事………」
 
「……今更何を言っているんだか」
 
 道徳の呆れの多分に入り混じった言葉に、天化は力の入らない指で背中を抓ってやった。勿論効果がある筈もない。反対に与え
 
られる刺激に天化の方が追い立てられ、逃げ場を無くす結果となってしまう。
 
「あ、あ、もう……も…」
 
 腰を引き上げられたかと思うと、今度は最奥まで突き立てられる。繰り返される波は変わらず押し寄せ、それに添うように摩擦
 
が激しくなり、早くなっていった。熱くて、身体全体が蕩けてしまいそうで、悦楽に何も考えられなくなる。
 
 喘ぎを零しながら涙でかすむ視界に彼を捉えようとすると、天化の大好きな瞳が見詰め返してきてくれた。普段では決して見ら
 
れない、微かに金色がかった彼の瞳。道徳が何かに本気になった時にしかこの眼とは出会えない。
 
 こうして見ることができると、それだけ自分に夢中になってくれていると感じられて嬉しくて堪らなかった。
 
「師父……コーチィ………!」
 
 呼べば口付けが落ち、腕に少しで力を込めれば抱き返してくれる。自分の求める全てを与えてくれるのがこの人だ。
 
 彼以外誰も欲しくない。誰にも触れさせたくない。自分だけを抱きしめて欲しい。全ての想いを込めて口付けると、道徳は応え
 
ながら最も感じる部分を何度も貫いてきた。
 
 背を反らし、天化は一際高い嬌声を放って身体をゆっくりと弛緩させる。
 
 意識を飛ばして背中から敷布に倒れこもうとする少年を、優しい腕はしっかりと抱き留めていた。
 

 翌日、太乙が二人の様子を見に来ると、丁度彼らは修行の真っ最中であった。
 
 出迎えた天化は太陽のような笑顔で元気一杯、昨日まで意気消沈していた姿信じられないほど上機嫌だった。道徳はというと、
 
すっかり疲れきった風情で、開いた本を顔に載せ、虎の姿の玉麒麟と共に木陰で寝そべっていた。
 
 そんな彼に太乙は『ミイラにならなくて良かったね』とニヤリと笑って言ったものである。
 
 それを『余計なお世話だ』という内心とは全く正反対の優しい微笑で受け流し、道徳は天化を呼び寄せた。
 
「天化、今日の修行は太乙がつけてくれるから、思う存分相手をして貰いなさい。手加減の必要は全く無いからね」
 
 永年の付き合いだ、太乙のうるさい口を封じる方法などいくらでも心得ている。道徳にはうってつけなことに、修行相手が欲し
 
くて手持ち無沙汰だった天化には、これほど嬉しい申し出は他に無かったようだった。
 
 紫陽洞の師弟にとってはよ思いつきでも、体育会系でない太乙にとっては不幸な上に災難なことこの上ない。恐ろしい目に遭わ
 
される前にと逃げ出しかけた太乙の首根っこ捕まえ、天化は意気揚々と修行場へと向って引き摺って行った。
 
 哀れな声で助けを求める同僚に、満面の笑顔を向けてひらひらと手を振って見送ってみせ、後の声は黙殺するように無視して再
 
び本で顔を覆ってしまう。そのまま玉麒麟の腹を枕代わりにして、ごろりと寝転がった。
 
 数十秒後、太乙の絶叫が青峰山中に響き渡ったが、道徳はそれすらもBGMにして助けようともしなかったそうである。
 
 太乙真人に幸あらんことを――合掌。

                                                  2000.6.23/2001.10.20