W サプライズ・ゲスト
朝に訪れる客は鬱陶しい。特に、恋人と充実した夜を過ごした後に迎えた朝の訪問客ほど、殊更に鬱陶しくて邪魔なものはない。
現在十五歳のアキラ少年は、玄関扉を開けると立っていた友人二人を見て、不謹慎にもそう感じずにはいられなかった。
USJから一ヶ月ほどたったある日の朝は、こうして始まった。
今朝も今朝とて、可愛くて愛しい想い人のためにアキラは朝食作りに励んでいた。炊き立てほかほかごはんと焼き魚にお浸し、玉子焼、お漬物、味噌汁といった
品々である。純和風で栄養価も満点、一汁三菜を満たした完全無欠の食事だ。
ほぼ朝食も出来上がり、あとは朝が弱い愛しい人を起こしに行くついでに、寝顔も堪能しようというところに響いた無粋な音。
アキラを急襲するように鳴ったその音こそが玄関のチャイムだ。
香り立つ味噌汁の匂いや、廊下を歩く人の足音がしている人家で、こうも人の気配がしているのに居留守を使うわけにはいかない。
へたれのくせに嫌味なことを言うのが大好きな兄弟子や、料理が得意で何かとアキラの世話を焼きたがる兄弟子の訪問の可能性もある。
尤も、この二人の場合はチャイムも鳴らさずに勝手に入ることもしばしばだ。そうなるとチャイムをわざわざ鳴らす相手となる。
猫被り外面大魔王のアキラは、他人に対して失礼な真似はしないだけの社会的常識を持っているので、渋々玄関に向かうことにした。
ただし機嫌は一気に急降下して、非常に悪かった。
折角の輝かしい朝なのに、自分の嬉し恥ずかしお楽しみタイムに水を差すような輩は斬って捨ててくれる!というような勢いである。
絶対零度のオーラで凍りつかせるか、或いは灼熱の業火で焼き尽くすか、どちらにしても八つ当たりされる相手にとっては迷惑以外のなにものでもない。骨はとり
あえず拾ってやると、被害者には有り難くないお言葉をかけるだけで、念仏でも唱えて冥福を祈るのみだ。
アキラの言い分では朝に訪問してくる奴が悪いのだが。
しかし今朝の訪問者は、低気圧な現在の家主を相手に動じるようなまともな感覚の持主ではなかった。
玄関扉を開けた瞬間にさりげなく睨みつけられたにも関わらず、彼らは平然と笑って朝の挨拶を行っていたのだから。
「おはよう、塔矢」
「おっはよー!塔矢君!いい匂いだな、これから朝飯か?」
「……おはよう…」
どことなくドスのきいた低い声で答えるアキラの声には、早く帰れという思いがありありと滲み出ている。だが、この程度のことで一々びびるようでは、塔矢邸に朝の
訪問などやってられないのだ。この家の主人が不在の時には、特に神経の図太さは大切である。
アキラの元同級生でもあり、幼馴染でもある津川弘毅と中村聡は、不機嫌そうな幼馴染の反応にも全くめげもしなければ悪びれもしない。
にこにこ笑いながら素早くアキラの横をすり抜けて、玄関に足を踏み入れる程度のことは軽くやってのけるツワモノだった。
しかもちゃっかりと靴を脱いで、たたきに上がるくらいの厚かましさも二人は持ち合わせていた。大人しく玄関扉の前で待っていたら、家に上がらせて貰えずに訪問が
終わってしまいかねない。そうならないようにするならば、とっとと上がり込むに限る。
彼らの神経はナイロンザイル並に図太く鉄仮面より面の皮が厚い。
アキラにびびって尻込みしているようでは、幼馴染は務まらない。
反対にアキラをやり込めるくらいの気概(茶目っ気と悪戯心)を持たなければ、塔矢アキラの幼馴染なんてできないのだ。
それが彼らの持論である。
アキラにしてみれば、二人の幼馴染であることこそ並の神経ではもたないと思うのだが、どちらの主張も五十歩百歩のどんぐりの背比べであることには変わりないだろう。
アキラと津川と中村とは、小学生の頃からの付き合いだ。
名簿でたまたま席が近かったのが最初のきっかけではあるが、どういうわけだかこの三人は妙に馬があった。
囲碁ばかりのアキラも話題が尽きずに気楽に話せて、軽妙ながらも真摯な友人付き合いができるのは彼らくらいである。だからこそとても貴重で大切な友人ではある
のだが、彼らにも困った面が存在する。
その困った面が、アキラとしても頭の痛いところなのだ。
野次馬(出歯亀)精神と好奇心が旺盛でお祭り大好きな目立ちたがり屋、しかも金儲けが大好きという、どちらかといえばアキラとは対極に位置する性質を持っている
のが、津川と中村だった。二人はお祭り騒ぎも目立つことも好きだが、アキラは余り好まない。
好奇心旺盛で野次馬根性もたっぷりな二人とは違って、アキラは探究心こそあるが野次馬的な好奇心については非常に淡白だ。
囲碁は好きだし職業としているのだから給料として対局料が入って、それなりの生活が出来ればいい、という感覚がアキラだが、彼らの場合、金はあればあるほどいい、
儲けるなら儲けるだけ儲ける!である。
まるでどこかのあこぎな関西人の商売人を髣髴させる感覚だ。
そして二人は自分達の好奇心をアキラに向けてきたり、また様々な計画にアキラを巻き込んだりもする。そこが、アキラにとっては傍迷惑で困った一面だった。
それ以外ではとても楽しくて、面倒見もいい優しい友人なのだが。
津川は眼鏡をかけているので、一見するとガリ勉の優等生タイプに見られがちだが、実際は見た目とは大いに違う。
確かに勉強もできるが、それだけではない。
ここぞという時の決断力にたけ、纏め役としてはもってこいのリーダーシップのある人物だった。中村もまたリーダーシップに優れ、雰囲気が軽く明るいこともあり、お祭
り騒ぎの音頭とりやムードメーカーとしての役割も易々とこなす。人間も動物の一種であることから、無意識に誰がリーダーとなるべきかを本能で選ぶものだ。
津川と中村は、クラス替えがあると、必ずといっていいほど選ばれて委員を務めるのである。
そしてどういうわけだか、アキラは小学生の時に彼らと出会って以来、一度も別のクラスになったことがない。つまりは、常に三人揃って同じクラスになるのだ。
彼らが一緒のクラスになる時は、大抵一学期に中村が学級委員長になって津川が副委員長、二学期は津川が委員長になり中村が副委員長を務めることが多い。
三学期は何故だがアキラにお鉢が回る。
学期として一番短く、また行事もないので気楽なので構わないが。
一学期はクラス全体が慣れずにギクシャクすることもあり、ムードメーカーの中村がクラス全体の緊張を解し、津川が取り纏める。
二学期は体育祭や文化祭などの催し物があるから、纏め役に津川がなって、お祭り騒ぎを盛り上げる役目を中村がするのだ。
三学期になるとクラスはすっかり落ち着くこともあり、無駄な時間を作らず淡々と仕事をこなしていくアキラが委員になると、脱線せずにスムーズに事が運ぶのである。
津川と中村の特筆すべき能力は、お互いだけでなく他人の適材適所を効率よく見極める嗅覚のようなものも持ち合わせていることだった。
超一流の傑出した才覚や才能のある人物ならではの、一種の勘のようなものが、津川と中村には確かにある。
アキラを巻き込むのも、二人にすれば当然の結果なのである。
塔矢アキラという少年は、本人が考えている以上に豊かな才能を持っている。頭脳明晰、容姿端麗であるだけでなく、運動能力も高い。
文化祭や学園祭など、アキラにこなして貰う役割はとても多いのだ。劇をさせれば台詞を覚えるのも早く演技も上手い。歌を歌わせれば見事な歌唱力を発揮する。
お遊び企画のイレギュラーではあるが、クラス対抗女装コンテストに出したら、見事に優勝もした。
体育祭ではクラス対抗リレーのアンカーは必ずアキラに決める。陸上部員を差し置いて走りたくないとアキラはひどく嫌がるし、陸上部員も怒らせることもあるが、憎
まれ役を買ってでも二人は決定している。そして結果的には全員を納得させて成功する。
冷静に見えてもアキラはとてつもなく負けず嫌いだ。例え最下位でバトンを渡されたとしても、全員をごぼう抜きにして必ず優勝する。
勝負事においては根っからの勝負師であるアキラの追い詰められた時の集中力と脚力は、国体に出ている陸上部員だって目ではない。
アキラの攻めの姿勢と強気さは如何なる場でも発揮されるのである。
どんな競技や役でも、与えられたからには完璧にこなす。
イヤなら最初からやる気を出さずに手を抜けばいいものを、負けず嫌いで生真面目なアキラは、求められた以上の結果を出すのだ。
基本的に目立ちたがり屋でないアキラは、津川と中村から切札として指名され、注目を浴びるのは余り嬉しくないのが本音であるが。
競技自体に参加するのはやぶさかではないが、できれば目立たないようにして欲しい。アキラ自身が、自分という存在が異彩を放って目立っているという事実に全く
気づいていない暢気な考えといえる。
津川と中村にしてみれば、いつだってアキラに最適で適任な役割を選び、彼らの考えた以上の結果を出す最高の人選だという自負がある。
三人の認識には大きな食い違いがあるものの、それでも友人として仲が壊れないのは、経験と実力に裏打ちされた信頼関係があるからだ。
他人からみた三人は最初こそ奇妙な取り合わせに感じても、意外性に富んだ味のある見事な組み合わせになっている。
三人が集まっても、不思議と違和感がないのだ。アキラと平然と友人付き合いのできる二人組は少しばかり変わっているように思われがちだが、天才は天才に惹か
れるという言葉通り、彼らも確かにある種の天才であるが故なのかもしれない。
表現を変えると、類は友を呼ぶとも言える。
大切な伴侶にアキラが魂ごと惹かれるのは、やはりタイプは違えど天から与えられた才を持つ故だ。似た者同士でもあるけれど。
玄関扉を開けて二人の友人との対面を果たした瞬間、アキラの脳裏には子供の頃からの付き合いによる危険信号がすぐに鳴った。
こういった予告なしの訪問は、大抵の場合アキラに何らかの難題が降りかかると相場が決まっている。同じ学校に通わなくなって数ヶ月になるが、彼らの抜き打ち
電話と訪問はろくなことがない。今回の訪問目的は何なのかアキラには分からなかったが、二人は玄関に入るなり、脱いである靴を素早くチェックしていた。
「なーんだ、靴は男物か…」
「今日は泊まってないの?『浴衣の君』」
ニヤニヤと楽しそうな笑顔を浮かべながら尋ねてくる津川と中村の姿を見て、アキラは本日の訪問目的を理解した。
どうやら二人はアキラの恋人『浴衣の君』が泊まりにきているかどうか、抜き打ちで確認しに来たらしい。
彼らは幼馴染の純粋な好奇心と、出歯亀と野次馬精神から、アキラの恋人の正体を知りたくて堪らないのだ。
因みに『浴衣の君』とは、まだ見ぬアキラの恋人と想定した想い人に対する、二人の考えた一種のニックネームである。
三年前、中学二年の時の美術の写真課題で、浴衣姿でアキラと一緒に夏祭りに出かけ、課題のモデルにもなったその人物を、着ていた浴衣から『浴衣の君』と呼ぶ
ようになったのだ。とはいえ、彼らの認識は少しも間違っておらず、むしろ正しい。
アキラと『浴衣の君』は確かに恋人同士であるのは違いない。
今年の夏に告白してその夜のうちに一線まで越え、頻繁に泊りにもきている。アキラの生涯のライバルであり伴侶でもある。北斗杯では副将を努め、最終戦の韓国
戦では大将を務めて高永夏を追い詰めた。
アキラより少し背が低くて小柄ながら、勝気で負けず嫌いで傍若無人なワガママ女王様、それでいてどこか儚く寂しがりやな可愛い人。
アキラの大切な想い人の名は『進藤ヒカル』という。
そして進藤ヒカルは列記とした『男』だった。
別にアキラは同性愛者というわけではない。たまたま出会った生涯の伴侶でありライバルの性別が同性の男だっただけだ。今更悩んでも仕方ないし、それにアキラ
にとってはそんな事は大した問題ではなかった。『同性でも好きなものは好きだ、文句あるか!』と、既に開き直りというか度胸で腹を括る境地にまで至っている。
故に棋院関係者の方々も、塔矢家の若様及び進藤家の女王様に逆らおうなどという、命知らずな考えを持つ者は居なかった。
何のことはない。馬に蹴られるどころか、竜と虎の逆鱗に触れて、完膚なきまでに叩きのめされたくないからである。
誰だって稀代の天才棋士と呼ばれ、超大立者となる人物を最初から敵に回して、自分の寿命を縮めたいと思う物好きはいない。
数歩離れた場所から眺めて、時々伸ばした棒でつついて遊ぶ物好きな輩は居るが。尤も、そんな物好きは相当な大物くらいである。
賢い人々は、見て見ぬ振りと我関せずを貫き通すのだ。
そして別の立場でアキラとヒカルと関わりあうことになる二人の少年は、そんな事とは露知らずに今日も平和でお気楽だった。
二人はアキラの恋人が女の子だという先入観があるので、玄関にある靴が男物だと見ると、すぐに興味を失くしていた。
自分達が会ってみたくて堪らない『浴衣の君』と既に顔を合わせているだけでなく、抜き打ち検査通りに泊まっているとも気付かずに。
「そんな事よりも今日は何の用?」
さっさとたたきに座って靴を脱いで上がろうとしている幼馴染を止めようともせず、アキラは半分諦めながら声をかけた。ここまでくると、二人が満足するまで居座る
ことを経験的に彼は知っていた。
「いやぁね、用事がないと来ちゃいけないの?塔矢君」
「オレ達ダチじゃなーい」
おネェ言葉で応酬する二人に一々反応する気も起こらず、溜息を吐いて先に立って歩き始めた。取り敢えずは居間に通すしかないだろう。
客間に案内したとしても、絶対に一緒に食べたいと言うに決まっているからだ。ならば無駄な体力は使わないに越したことはない。
余計なツッコミを入れると、悪乗りする傾向が二人にはある。
「朝食は食べてきているんだろう?」
「うん!だからお茶とお茶請けだけヨロシク」
「じゃあ、最中と煎茶でいいね」
にっこりと笑顔で厚かましく請求してくる中村に対しても、アキラは既に慣れたもので素直に頷いた。
この程度のことで一々目くじらを立てて怒ったりしていては、神経がもたない。
「塔矢の手作り朝食を食べられないのは残念だよなー」
「今度来る時は抜いて来ようぜ、津川」
二人が勝手に相談して決めているのを背中で聞きつつ、いつ抜き打ちでくるか分からない幼馴染用に、次からは多めに材料を買っておかねばならないと、内心嘆息
しながら考えていた。居間の傍まで来たところで、同じように居間に向かってきていたらしいヒカルと三人は丁度そこで鉢合わせをした。
昨夜からアキラの自宅に泊まりにきていた『浴衣の君』こと進藤ヒカルは、美味しそうな朝食の匂いにつられてここまで来たのだが、まさか自分以外の他人が塔矢家
を訪問しているなど思ってもみなかった。
それもまだ朝の早い時間だ。ヒカルも面識のある塔矢門下の二人ならばさして驚きもしないが、この二人は自分とも同年代である。
ヒカルは思いがけない訪問者の姿に驚いて固まり、二人のサプライズな客も意外な人物の登場に眼を丸くする。
「あれ?進藤ヒカル?」
いきなり自分の名を呼ばれて更に驚いたのか、ヒカルは益々身を硬くして、警戒心の強い猫のように二人の少年を窺った。
ヒカルは基本的には人懐こくて誰とでもすぐに仲良くなれる方だ。
思春期に入ろうとする頃に囲碁幽霊と出会って共に過ごすようになった時もあっさりと受け入れている。
順応性が非常に高く、懐が深い表れだろう。
けれど普段が寛容で余り物怖じしない反面、自分のパーソナルスペースに唐突に近付かれそうになると、頑なに殻を閉ざして警戒する傾向がある。
縄張りを護ろうとする人慣れしない野生の虎のように。
ヒカルはこういった面では非常に繊細で、表面的には友好的には見えても、心はすっかり殻に入ってしまうこともある。
アキラはヒカルの様子をちらりと見て、素早く口を開いた。
ヒカルが完全に自分の中に閉じこもってしまうと、表面上は好意的に接してもそうそう簡単には他人に懐かない傾向がある。
ヒカルにとってマイナスになる相手ならばそれで構わないが、彼にとって有益な相手となる者に対して対応を間違ってはならない。
だからこそ、アキラはヒカルが内に篭もることを未然に防ぐために、普段ならばしない紹介をさりげなく行った。
「進藤、ボクの幼馴染の津川と中村だ。北斗杯でも一度会っているんだけど……短かったから覚えていないかな?」
柔らかく微笑んで二人を示してみせると、困惑した様子で首を傾げている。恐らくはっきりと覚えていないのだろう。
いくら素晴らしい棋譜の記憶力を誇っていても、勉強や日常生活におけるヒカルの記憶力は決していいとはいえない。
ヒカルは二度、三度と瞬きを繰り返して津川と中村とアキラを何度も視線を往復させ、やっと少し警戒を解いたように微笑んだ。
「そういえば……レセプション前にちょっとだけ会った気がする」
小さく呟いたヒカルに中村と津川が破顔した。
「覚えててくれてたんだ!オレは中村聡、改めてよろしく!進藤君」
「オレは津川弘毅。朝早くから来て悪かったよ」
「あ…うん。よろしく」
中村が嬉しそうに笑いながら軽い調子で握手を求めると、ヒカルも緊張が解れたのかいつも通りの笑顔を見せて二人に応じる。
こんな時の中村の立ち回りはさすがに上手い。相手の緊張を和らげ、さりげなく張られたバリアを解く社交術を持っている。
そして中村に続いた津川の対応も見事なものだった。
彼の落ち着いた声音と物腰は、相手の心を冷静にさせる効果がある。
挨拶を交わしただけで、眼の前の人物の無意識下の警戒心や疑念などを解せるのは、ヒカルも同様に持っている天性の社交術だ。
尤もこれまでの経験値の差で、彼らの方に一日の長があるようだが。
それでもどこかで通じ合うものがあるのだろう。ほんの二言か三言で三人は屈託なく会話を始めている。
勿論それには、親しげな雰囲気で紹介したアキラの功績も大きい。
互いが持つ未知の相手に対する硬さや懸念が、共通する人物のさりげない一言で払拭されたのだから。
ヒカルの反応を横目で見ながら、アキラは内心胸を撫で下ろした。
恐らくこれでヒカルは彼らに対して、無用な警戒はしないだろう。
アキラとしても二人の幼馴染に対してヒカルが壁を作るような真似はさせたくない。
何より彼らはヒカルにとっても自分にとっても、将来的に非常に大きな後ろ盾となってくれる可能性がある。
今ここでその可能性をヒカル自身に潰させるわけにはいかない。
「挨拶が終わったのなら食事にしよう。仕度はできているよ」
ヒカルと幼馴染の様子を眺めて、頃合を見計らって声をかけてきたアキラに、三人は揃って笑顔で頷いた。








