「夏の風景写真」のこのおまけ話は、私にとって初の試みの会話と擬音形式のみの書き方で行いました。こういう書き方はとても楽でしかも楽しいのですが、私としてはちょっと書き辛かったすね(笑)。
 書いているうちに、彼らがどんな風に行動しているのかとか、アキラが焦っている姿とかを書きたくなっちゃいました。
 彼らの会話で、どんな風にヒカルとアキラの仲が進展しているのかを少し匂わせれたらと思ったのですが…どうでしょう?
 本編でものんびりと書いていくつもりです。できましたらお付き合いいただけますと幸いです。
 今回も出張っているオリキャラ君達ですが、今後も登場の機会があったら出してみたいですね。
 
夏の風景写真 おまけその2−U夏の風景写真 おまけその2−U夏の風景写真 おまけその2−U夏の風景写真 おまけその2−U夏の風景写真 おまけその2−U   COOL(ヒカルの碁)COOL(ヒカルの碁)COOL(ヒカルの碁)COOL(ヒカルの碁)COOL(ヒカルの碁)
 9月 
「なあ、なあ。浴衣の君とはもう対局した?」
 
『…まだないよ。この間手合通知が来ていたから、近いうちに実現すると思うけど』
 
「へ?もしかして、塔矢って浴衣の君と打ったことねぇの?」
 
『ああ、その…あるのはあるんだが…。あの頃と今とではまるで違うだろうし…それに…』
 
「それに…何?」
 
『…いや……何でもない』
 
「ふーん、まあいいけどさ(こういう言い方する時は絶対に口割らないんだよな、こいつって)」
 
「とにかく頑張れよ(相変わらず浴衣の君に関しては秘密主義だな〜)」
 
『ああ』
 
 10月
 
「手合どうだった?」
 
『勝ったよ』
 
「へぇぇ〜。あっさり言い切ったな」
 
「ってかさぁ…普通好きな子が相手だったら手加減しようとか思わねぇ?」
 
『まさか!仮にそんな事をしようものなら、ボクが反対に殴り倒されても文句は言えない立場だよ』
 
「……へ?(殴り倒すって…どんな凶暴な女だよ)」
 
「マジ?(浴衣の君って大和撫子みたいに見えたんだけど、意外とがさつ?)」
 
『当たり前だろう?真剣勝負の場で、相手が誰であっても手加減なんてするわけがない。親であろうが、恋人であろうが、自分の
 
息子だろうが関係ない。むしろそんな真似をする方が、相手に対して失礼というものだ』
 
「相手が浴衣の君でも?」
 
『その浴衣の君、だからこそだよ。ボクが一番本気で打ち合いたい相手は、君たちが呼ぶところの浴衣の君なんだもの』
 
「大事な子なんだろ?浴衣の君は」
 
『勿論大切だとも。だが、それとは別問題だ。ボクにとって一番勝ちたい相手であるし、負けたくない相手でもある。最大最強の
 
好敵手だよ』
 
「へぇぇ〜」
 
『どんな棋士とも味わえない、素晴らしい一局だった。ボクが予想した以上に、特別な対局になっと思う。浴衣の君との対局は、
 
どこで場所で打とうともお互いの成長の為になる、最高の一局になるよ。お互いにそう感じられるほど、誰にも譲れない相手だ』
 
「なんか…すげーなぁ」
 
「うん、格好いいよ」
 
『何が?当然のことじゃないか』
 
「ああ、いいのお前はわかんなくて」
 
「そういうこと。じゃな〜」
 
 プツン!
 
「すげーよな、ライバルで恋人同士ってか?」
 
「お互いに譲れない好敵手ってわけだ。く〜格好いい!」
 
「けど…浴衣の君って益々わかんなくなってきたな」
 
「そうだな、大人しめのタイプかと思ったけど、どうも違う雰囲気だし。こりゃ目が離せないな、津川?」
 
「おうよ!塔矢の恋の行方はこれから絶対に面白くなるぜ!」
 
「「フッフッフ…今後の進展具合が楽しみだな…(ニヤリ)」」
 
 11月
 
「季節的にもいい感じだしさ、そろそろデートとかしてんのか?」
 
「どっかに出かけたりさ」
 
『……別にしてないよ、出かけたりなんて』
 
「相変わらず朴念仁だな、おまえ」
 
「誘いなよ、碁ばっかり打ってないでさ〜」
 
「「どうせ、碁会所で碁だけ打って「じゃあまた明日」ってだけの生活なんだろ?」」
 
『………っ!(図星)』
 
「うはは!色気ない逢引ー!」
 
「塔矢らしいけどな」
 
『…………(図星継続中)』
 
「おーい、塔矢君?」
 
「黙ってないで答えなよ」
 
『……放っておいてくれ……!』
 
 ガチャン!ツーツーツー………
 
「あらら…もしかして大当たりだったか?」
 
「けど、絶対にあいつにとってはデートのつもりだったと思うぜ」
 
「やっぱりこういうことに関してはバカだな、塔矢って」
 
「多分今度からはそれなりに工夫するようになるんじゃねぇの?あいつにだって学習能力あるんだしさ」
 
 12月
 
「いや〜…12月といえば誕生日!そして何と言ってもクリスマス!」
 
「この季節は恋人同士のイベント満載ですな!塔矢先生!」
 
「勿論、デートするよな!?」
 
「どの辺りを考えてるんすか?若先生」
 
『若先生っていうのはやめてくれ。それに会うも何も……北斗杯の予選が終わるまで、うちの碁会所には来ないって…』
 
「えーっと…それは何と申しましょうか…」
 
「ご愁傷様です…」
 
 1月
 
「えーっと、まだ浴衣の君とは仲直りできてないのか?」
 
『別に喧嘩をしたわけじゃないから、会ってはいるよ』
 
「「へ!?碁会所に来ないって言ってたんじゃねぇの!?」」
 
『うん、そうだよ。北斗杯の予選が終わるまで、うちの碁会所には来ないことになってるけど…。でも喧嘩をしたからってわけじゃな
 
いんだ。碁会所で会えないなら、他の場所で会えばいいだけの話だからね』
 
「「はあ……」」
 
『だから、打てない分だけよく会ってるんだ。昨日も一日一緒に居て、買い物をしたりしたんだよ』
 
「「ああ、そう…(転んでもたたでは起きない奴…)」」
 
『ボクに似合う服を選んでくれたり、デジカメを買いに行くのに付き合ってくれたりしてね。それから…云々(惚気三昧が延々続く)』
 
「ハハハ…そりゃ〜仲のよろしいことで」
 
「たくましくなって、すっかりエンジョイしちゃってるねぇ……キミ」
 
「あ〜、何かムカついてきた。大体からして言い方が紛らわしいんだよ、おまえは!」
 
「碁会所に来ないとかって、ムッチャ暗い声で言いやがって!」
 
『え?だってあの時は本当にショックだったし…』
 
「けどその分他で会ってんだろうが!」
 
「この幸せ者っ!」
 
 2月
 
「……2月といえばバレンタインデー!男にとって一番の祭典だ!」
 
「塔矢君、キミは浴衣の君からチョコレートを当然貰ったな!?」
 
「「手作りか否か!さあ、どっち!!」」
 
『あれは一応貰ったことになるのかな……?だとしたら、手作りじゃないな』
 
「やったー!オレの勝ち〜!後で奢れよ、津川」
 
「チクショウ!絶対に手作りチョコレートだと思ったのにー!」
 
『あの…もしもし…?津川?中村?』
 
「おまえは気にしなくていいから、こっちの話」
 
「それよりもだな、さっきのあの『一応』とかいう微妙な言い回しは何なんだ?」
 
『一応は一応。キミ達は気にしなくていいよ、こっちの話だから(自覚して渡してくれたわけじゃないから、一応なんだけどね)』
 
「「あっそ(段々図太くなってきて、逆襲するようになってきたよ…)」」
 
 3月
 
「なあなあ、ホワイトデーに何か渡した?」
 
『ラーメンを奢ったよ』
 
「「ラーメン!?(浴衣の君って一体……?)」」
 
『それからお返しに凄くいい物もくれたんだ。ボクにとって一生の宝物になるよ』
 
「へぇ…良かったな」
 
「キミ、ホント幸せそうだね」
 
『確かに恵まれているな。これまでのことを考えると、一緒に過ごせる時間があるだけでも、とても幸せだと思ってるよ。だか
 
ら…それ以上望むのは贅沢だと分かっているんだ…』
 
「「塔矢?(意外と複雑な事情がありそうだな)」」
 
『……何でもない』
 
 4月
 
「北斗杯予選終わったんだろ?碁会所デートは解禁になったのかよ」
 
『デートって……まあ、碁会所で打ってはいるよ』
 
「塔矢のことだ、やっぱり相も変わらず、終わったら『ハイさようなら』な生活なんじゃねぇの?」
 
『失敬だな。ボクだってバカじゃない。帰りに食事に行ったり映画を観に行ったりしているよ』
 
「ふーん、そうなんだ〜」
 
「へぇぇ〜食事と映画ねぇ」
 
『………何だ、その疑わしそうな気のない返事は』
「どうせ、食事といっても浴衣の君が好きなラーメン屋がせいぜいだろ」
 
「映画を観に行っても、この間から話題になってるスパイダ○マンとか、色気のないもんに決まってるよな」
 
「後は近所の公園で帰りに話す程度が関の山?」
 
「遊園地とかにも行かねぇだろうし?」
 
『…………っ!?(何で分かるんだ…?)』
 
「やっぱり、大当たりか」
 
「純愛路線貫いてるねぇ…塔矢君」
 
 5月
 
「北斗杯二連勝おめでとうさん」
 
「おまえ本当に負けず嫌いだなぁ」
 
『そりゃあ、勝負の世界に身をおいているんだから……負けたくない決まっているだろう』
 
「その上頑固者で意地っ張りだし」
 
「顔と頭はいいけど朴念仁の鈍感だし」
 
「大抵の女の子は塔矢の外面に騙されてころりってのが多いけど…」
 
「絶対に長続きしないよな」
 
「うん」
 
『キミ達は何が言いたいんだ?』
 
「浴衣の君は、おまえのどこがいいんだろうな?よくよく考えてみると、塔矢って恋愛に向いてそうにないもん」
 
「オレもスゲー疑問だよ。まあ、蓼食う虫も好き好きって言うからなぁ……」
 
『……どこって…囲碁…………?(硬直)』
 
「………(それだけかよ)」
 
「……(他に何も思いつかねぇってのが哀れだな)」
 
「「ま、せいぜい頑張れよ」」
 
『ハハハ…応援どうもありがとう…』
 
 6月
 
「浴衣の君とはあれからどうよ?」
 
『最近はよく泊まりに来るよ』
 
「……へ?」
 
「確かおじさんとおばさんは中国なんじゃ…」
 
『そうだよ、だからしょっちゅう泊まりに来てるけど』
 
「と、泊まるってマジ?」
 
『うん』
 
「……二人きりなんだよな?」
 
『当たり前だろう?それが何か?』
 
「えーっと……(オイオイ、まずいって意識はこいつにねぇのかよ。オレ達まだ高校生だぜ!?不順異性交遊!?)」
 
「あのですね若先生?一つ屋根の下で一緒に居るってことなんですけど?(半同棲ってことだよな…ひぇぇ〜!)」
 
『当然、一日中囲碁尽くしで、本当に充実しているよ。昨夜も一晩中一手十秒の超早碁をしていて、気がついたら朝になって
 
いたし。今日も昼から一局を打っていたんだ』
 
「…あっそう(っていうか、碁しか打ってねぇのかよ!間違っちゃいねぇけど、健全過ぎっ!)」
 
「さいですか…(男としてある意味問題とも思えるけど…これはこれでいいのか?心配して損した)」
 
 7月
 
「夏休みも始まったし、海行きてーな。津川」
 
「ああ、今度行こうぜ。そういや、塔矢は今年はもう海に行ったのか?」
 
『ボクはこの間、緒方さんと芦原さんと行って来たけど』
 
「浴衣の君とは?」
 
『え?一緒に行ったよ』
 
「まさかとは思うが……泊りじゃねぇよな」
 
『…?泊まりだけど?』
 
「な、なに〜!?(とうとう大人の一歩か?すげーぜ塔矢)」
 
「それで?それで?どんなだった?(ちょっと見直したぞ!塔矢)」
 
『いや、その………折角告白したけど……寝ていて聞いてなかったらしくて…ダメだったんだ』
 
「はあ〜!?…ってまだ告白してなかったのかよ!!」
 
「ダメダメじゃん!!!」
 
 8月
 
「いい加減告白はしたんだろうな?塔矢」
 
「先月の電話で、まだしてないって聞いてオレ達無茶苦茶驚いたんだけど?」
 
「遅過ぎるんじゃねぇの?囲碁だとあれこれ早い方なんだろ?」
 
「こっちじゃてんで不器用だな、塔矢は。碁では攻め気の力碁のくせに」
 
「告白してないんなら、今すぐ電話しろ!」
 
「呼び出してやっちゃえ〜!」
 
『……わざわざ呼び出す必要も、電話する必要もないよ』
 
「ってことは…したのか!?」
 
『…………うん』
 
「へえ〜そうか。返事は勿論OKだよな」
 
「当然だしょ。キスとかもしたりして?いやー青春だなぁ」
 
『………』
 
「はは〜ん、したわけね」
 
「告白の勢いのままCもやっちゃったりしてな!」
 
「塔矢なら有り得る〜!」
 
――ガチャン!!……ツー、ツー、ツー………
 
「「……マジ?」」
 
「あいつ…ぼんくらのくせして手だけは早いんだな…」
 
「…早いのは碁だけにしろよ……」
 
 9月
 
「何だって必須科目に中国語も入ってるんだよ。受験に関係ねぇじゃんか〜」
 
「そんな事言っても仕方ないだろ。ここは塔矢に電話して聞こうぜ。あいつ中国語もかなりできるみたいだし」
 
「語学方面強いよな、塔矢は」
 
「告白するのは遅かったけどな」
 
「違いない」
 
――トゥルルルルル…トゥルルルルル…プッ
 
「あ、もしもし塔矢?」
 
『………ぁ』
 
「???…塔矢?」 
『……あ…ん』
 
「??????」
 
「????」
 
『…う…ふぁ……』
 
「??……(えーっと、これは…もしかして…)」
 
「???………(有り得ないと思うけど……アレ…とか?)」
 
『は…ダメ……ぁ』
 
『…うん……ここ…?』
 
「……(ひぇぇぇー!何が『ここ』なんだ!?何が!?中村、早く切れよ!電話)」
 
「………(ここでばれたら八つ裂き決定!?ど、ど、どれだっけ?電源!おまえんちの電話だろ?津川、何とかしろよ〜!)」
 
『あ!?くう……ん…』
 
『…大丈夫…少し我慢して……』
 
『ふ…ぅぁ…も……』
 
「「……(あわわわわ…!?何言ってんだ〜!………意味を考えちゃダメだ!考えちゃダメだ!)」」
 
『や…はぁんっ!くぁぁ…!』
 
「「………(どっひゃー!電源っ!!電源っ!!!)」」
 
――ブツン!ツー、ツー、ツー……
 
「や、やっと切れた………」
 
「ああ、もう!こんな昼間からエライもん聞いちゃったよ……!」
 
「……って真昼間からさかってやってんなよ!!」
 
「夜にしろ!夜に!昼は碁の勉強やってろ!」
 
「今度塔矢に会ったらリベンジだな」
 
「ネタ考えておこうぜ」
 
「はあ〜、なんかどっと疲れた…。浴衣の君にあいつのどこが良かったんだろ?北斗杯の大盤解説会場には来てなかったし、
 
結局ずーっと会えずじまいなんだもん」
 
「そうだな」
 
「うん?……あれ?何であそこに来てないって分かったんだよ?」
 
「いや、だって…………ホントだ、何でだろ?」
 
「もしかして、自覚なしに一回会ったことがあるとか?北斗杯の時に浴衣の君が選手になるとかどうとか、あいつ言ってたし」
 
「有り得ね〜!だって、塔矢の囲碁仲間なんてヤローかおっさんばっかじゃん!」
 
「そうだよな。北斗杯の時に会った『進藤ヒカル』は綺麗な顔してたけど男だったしなぁ…」
 
「棋力は高いって噂だし、進藤って最近じゃ塔矢と双璧扱いで、囲碁界の虎って言われてるけど……」
 
「「……そういえば……日高先輩が浴衣の君は『虎』だって……言ってたような…」」
 
「……つ、津川…き、き、聞き間違いだよ、きっと!な?」
 
「だよな?中村!…い、い、いくら塔矢でも男は押し倒さないよな?」
 
「「ハハハハ………まさかね…?」」
 

                                                 2004.10.2