ACTX  木曜日(THURSDAY)

 アキラが目覚めたのは、彩に餌を請求されて耳元で鳴かれたからだった。真っ白な前脚で、頬をぺちぺちと叩いてくる。
 あれからどれだけ眠ったのか、すっかり周囲は暗くなっている。腕時計で時間を確認すると、深夜を回った零時過ぎだった。
 風呂から上がってベッドに入ったのは十五時頃だったように思う。つまり八時間以上はたっぷりと眠っていたということだ。
 アキラはヒカルを起こさないようにベッドを下りると、食事を請求して纏わりついてくる彩に苦笑しながら、部屋を出る。
 明かりをつけようとしてつかないことに気づいて、寝る前に戸締りと安全のために自家発電装置を切ったのを思い出した。
 カーテンの隙間から差し込む月明かりを頼りに荷物から懐中電灯を探り出し、アキラは暗い室内で彩用の猫の缶詰を開けてやる。
 今夜はもう電灯を点けない方がいいだろう。光が外に漏れたりしたら、奴らに気づかれてしまうかもしれない。
 勿論それだけでもなく、招かざる客も呼び寄せかねない。
 缶詰の横に水を入れた容器も置くと、食べ終わった後に勢いよく飲みだした。お腹だけでなく、喉も乾いていたらしい。
 彩はすっかり満足すると、ダイニングでぼんやりと椅子に座って様子を見ていたアキラの膝に飛びのり、身づくろいをはじめる。
 柔らかな毛並を撫でてやると、心がふんわりと温かくなった。
 そろそろヒカルを起こして食事をしなければならない。何せ風呂に入る前に食べて以来、何一つ口にしていないのだ。眠っていたのだから当り前だとはいえ、空腹感は
かなりある。アキラはヒカルと社を起こしに行こうと腰を浮かしかけたが、それよりも先に社が瞼を擦りながら寝室から出てきた。
「おはよーさん…ちゅうか、おそようさんやな」
「とりあえず、おはよう」
 答えたアキラににやりと笑って、社もダイニングの椅子に座る。電灯を点けていないことを疑問に感じたが、すぐに合点がいった。
 アキラは光が漏れると、奴らに見つかるだけでなく、他の難民までもが来る可能性があるとふんだのだろう。確かに助け合い精神は大事だが、アキラも社もそこまでお
人よしではない。相手が友好的な人々ならいいが略奪目的で襲われたら最悪だ。その危険性はけっして無視できないだけに、用心にこしたことはない。
 社は吐息をふっと吐くと、テーブル越しにアキラと眼を合わせる。
 あの機械が現れ、東京へ向かう旅を始めてからほんの数日間だというのに、アキラは心なしか痩せたように見えた。
「メシ食わへん?」
 成長期の胃が空腹を訴えて鳴ったのに苦笑を零し、社は努めて明るい口調で尋ねてみる。
「そうだな、進藤を起こさないと」
 アキラは同意するようにゆっくりと頷くと、彩を膝から抱き上げて社に預けた。それからヒカルを起こしに寝室に足を向ける。
 ヒカルはよく眠っていた。最初に戦闘機械と遭遇した日から、彼の睡眠時間は随分と増えている。
 他にすることがないというのもあるかもしれないが、恐らくは傷つき弱った心を修復する一つの方法として、睡眠を使っているのだろう。
 眠りはストレスを和らげ、精神の安定をはかれる効果がある。睡眠時間が短いと情緒不安定になるのがいい例だ。
 アキラはベッドの端に座り、そっとヒカルの前髪を掬った。柔らかな髪は、アキラの指先からするりと零れ落ちる。
 眠っているヒカルを起こすのは忍びないが、それでも食事はさせた方がいい。栄養はとれる時にとっておくのが一番だ。
「進藤、起きて。食事にしよう」
「むぅ〜…」
 不満そうにヒカルは唇を尖らせ、むずがって毛布に潜り込もうとするが、アキラはそれをやんわりとおし留めた。
「ダメだよ、起きて…」
「やだ…ねむい…」
「うん、でもお腹もすいただろう?」
 寝起きで舌っ足らずな口調で抗議するヒカルを優しく宥める。こうしていると、ヒカルと閨を共にした朝と錯覚しそうだった。
 しかし、現実の厳しさをアキラは嫌になるほど知っている。だからこそ、未来のためにヒカルと共に生きたいと望んでいるのだ。
 アキラはヒカルの腕を掴んで引き起こし、眠たげに欠伸をする頬に愛しさをこめて口付ける。するとヒカルも応えて身を寄せてきた。
 普段なら照れ臭がってしないというのに、アキラとのスキンシップをヒカルがしきりととりたがるのは、彼なりの安心を求めてだ。
 身近にアキラの体温を感じることで、その存在を確かめている。
「さあ、起きて。行くよ」
 抱き締めたヒカルの背中をぽんぽんと叩くと、寝乱れたバスローブを調える。ほぼ完全に起きると空腹も気になりだしたらしく、アキラに連れられてヒカルは嬉々として
ダイニングに入った。こんな姿を見ると、ヒカルの精神状態は安定しているように感じる。だがそれはあくまでも錯覚だ。
 今の状況とはまるで違った、普段の生活に近い場所に居るお陰で一時的な安心感に縋っているに過ぎない。
 ヒカルは自分を取り巻く恐ろしい現実から半ば逃避しているのだ。けれど、明日になればヒカルには残酷な『今』が待ち構えている。ならばせめて一晩くらいは、偽りで
も安心を与えたかった。アキラがヒカルを起こしに行っている間に、夜食の用意は粗方整えられ、社が簡単な荷物整理をしているところだった。
 スポーツ用品店に入ったのは月曜の夜で、育ち盛りが三人も揃っていれば二日もすると食料はかなり減る。当初はヒカルのディバッグと社の旅行用ボストンバック、風
呂敷代わりのひざ掛けがパンパンに膨れていたが、今では風呂敷の荷物はなくなりバックもだんだん軽くなってきている。
 それでもまだ数日間の食料があるとはいえ、油断は禁物だった。できればどこかでまた、必要な物品を調達する必要があるだろう。
 東京に着けば全てが終わるというわけではないのだから。
 荷物類や洗濯と乾燥が終わった衣類や靴などを一纏めにして、寝室に運び入れた。こうしておけば、もしもの時はすぐに逃げ出せる。
 簡単な食事を終えて人心地がつくと、再び眠気が襲ってきた。深夜十二時という時間の上に、ここ数日の疲れもかなり溜まっている。昼間にたっぷりと寝ていても、身体
は休息を求めていた。彼らは誰も眠りの誘惑に逆らおうとは思わない。
 三人は申し合わせたようにベッドに潜り込んだ。身体と精神の疲労を少しでもとるのに一番有効なのは、やはり睡眠なのだろう。
 久しぶりにまともな寝具で眠れるというのもあったのかもしれない。ここ数日寝ていたのは車の座席で、いくら広いといっても寝にくいことは変わらない。
 普通にベッドや布団で眠れる幸せは、日常生活では当然で気づかないが、こんな時は有り難さをひしひしと感じる。
 ベッドに入ってからほんの数秒で三人は眠りの世界に落ちていった。

 それから何時間眠ったのかは分からない。
 再び寝入ってから数時間後、プレハブ建てのモデルルームが轟音と共に激しく振動した。アキラと社は勿論のこと、ヒカルも含めて彼らは文字通り飛び起きた。
 まだ揺れている動きは地震ではない。地響きにも似た揺れは、何か大きな物が滑っているようにも思えたが、全く違うものとも思えた。
 着の身着のままで素足に靴を履き、荷物を持って窓の外に駆け寄って見たものの、取り立てて不審なものがあるようには思えなかった。
 だがアキラも、社も、ヒカルも本能で危険を察知していた。
 ここに居てはいけない、と全員が一瞬で判断を下し、素早く行動をおこす。彼らは荷物を布団に纏めてしまうと、それを持って書斎に通じる階段を駆け下りた。
 全く会話はなかったが、全員が示し合わせたように息の合ったコンビネーションで無駄なく動き、書斎の扉を些か乱暴に閉める。
 それとほぼ同時に、先刻と同様に轟音が轟き、何かが落ちたような振動で身体が跳ね上がった。その後も鳴動が書斎を揺らし続ける。
 三人は書斎用の大きな机の下に潜り込み、息を潜めた。
 ヒカルはアキラに指が白くなるほどの力でしがみ付き、社も彩を抱き締め、二人と一箇所に固まったまま動かない。
 現状の分からない不安感で、彼らの胸は押し潰されそうだった。
 あの機械とは違った音が徐々に小さくなって、やがて聞こえなくなる。揺れが収まってしばらくしても、三人は部屋に置かれていた重厚な机の下から出ようとは思わな
かった。何があったのかは分からないが、少なくとも今は外に出ない方がよさそうだ。
 彼らは顔を強張らせたまま、まんじりともせずに夜が明けるまで机の下で息を潜めて過ごした。

 社は書斎の明り取りの小さな窓から入ってくる陽光に瞼を照らされ、眩しさにうっすらと眼を開けた。
 きっと寝ることなんてできないと思っていたのにどうやら眠れたようだ。人間という生物は図太いもので、それでも眠ることはできるらしい。
 広い机の下に潜り、三人で雑魚寝するなんて滅多にない経験である。
 こういった場所は幼い頃に作った秘密基地を彷彿させる。実際に作って遊び疲れて寝たのならば、くすぐったいような照れ臭いような気持ちになって笑えただろう。
 しかし今はそんな気持ちになど微塵もなれなかった。
 社は寝癖がついてぼさぼさになった髪を手櫛で整え、床に置きっ放しになっている荷物の中から洗い立ての服を取り出した。
 結局服もまともに着ないままに寝たのは三人とも同じだった。アキラもヒカルも、布団こそ被ってはいるがバスローブ姿のままだろう。
 おかしな時間に起こされたことと、狭苦しい場所で眠っていたのもあって、身体がひどくだるい。欠伸をしながらのろのろと服を着替え、社は外の様子を見に書斎か
ら出て行った。階段を上って寝室に入ると、まるで竜巻が来たように滅茶苦茶になっている。
 ベッドは二つともひっくり返り、窓ガラスは割れて、ダイニングに通じる扉は蝶番が外れて倒れていた。
(一体何があったんや…?)
 荒れ果てた室内の様子に、社は首を傾げつつ倒れた扉から外に出た。そう、彼は外に出てしまっていた。本来ならばダイニングルームがあるはずなのに、そこには
何も残っていなかった。社は唖然としながら、周囲を何度も見回す。
 飾り物のテレビが置かれていたリビングは、なぎ倒されたプレハブの壁で埋め尽くされ、風呂も何もかもが綺麗さっぱり消えている。
 五月の太陽がその無残な光景をあからさまに照らしていた。よく見ると、プレハブの壁や扉には焼け焦げた跡が残っている。
 社は昨日の面影を一切残していないモデルルームを見回した。寝室と半地下の書斎と和室以外は全てがなくなり、何かが押し潰しなぎ倒していったような跡が見え
る。どうやらそれはかなりの熱を持っていたらしく、未だに燻って煙を漂わせているものもあった。
 社は壁などの物が倒れている方向に向かって数歩進み、その先にあるものを発見して急いで駆け寄る。
 それは潰れた旅客機のエンジンだった。タービンは既に止まっているが、まだ熱もっていて近づくと熱い。そしてその傍には、座席が剥き出しになった旅客機の胴体
部分が横倒しになって倒れている。
 人は乗っていなかったのか、或いは落下の際に振り落とされてしまったのか、そこには無人の座席が晒されているだけだった。
 恐らくこの旅客機は、奴らの円盤型タイプの機械かコンパス型の機械に攻撃されて落とされたのだろう。そうでなければ説明がつかない。
 例えそこにあからさまなほどの『死』の光景がなくとも、これを見るだけでもヒカルの心には相当な負担がかかるに違いない。
 考えるだけで憂鬱になりそうだった。あの時のヒカルの叫び声が社の耳にはまだ残っている。二度とあんな声は聞きたくない。
 特大の溜息を吐いて踵を返そうとしたが、ふと視界の端に何かが横切る。眼を凝らすと、エンジンになぎ倒された木々の奥に人が居るのが見えた。記者かカメラマン
なのか、写真をしきりに撮っている。こんな時でも報道関係者は取材を怠らないらしい。どことなく呆れた気分で記者の様子を見ていた社の視線に気付いたのか、彼は
手を止めてこちらを見ると、別方向に顔を向けて指をさして何か言っている。ほどなく林の中から一台のバンが近づいてきた。
 いかにもテレビクルーが乗りそうな大型の車で、さっきの様子からして、あのカメラマンは仲間に社の存在を告げたのに違いない。
 相手をするのもうんざりして、中に戻ろうかとも思ったが、そのまま着いてこられるのもまた鬱陶しい。社は帰りたがる足をおし留めて、その場に仕方なく立ち尽くした。
 バンは予想通りに、社の傍に来ると停車した。スライド式のドアが開いて、中からスタッフらしき女性が降りくる。大型バンの中には様々な機材が所狭しと入っていた。
 車の大きさからして、バンというよりもキャンピングカーの方が近いかもしれない。
 女性はすらりと背が高く、社と同じくらいの身長がある。Gパンにシャツというラフな格好で、アナウンサーやレポーターをしているようには見えなかった。だが恐らくは、
記者として何らかの活動をしているのだろう。
「君達、この旅客機に乗っていたの?」
 彼女の出し抜けの質問に、社は面食らう。だが実際は質問に驚いたのではなく、『君達』と呼ばれたのに慌てたのだ。もしもヒカルが外に出てきていたらと思うと、気が
気ではない。こんな光景を彼に見せるわけにはいかなかった。社は恐る恐る背後を振り返り、そこにアキラの姿を見出して安堵の息を吐いた。
 アキラはネクタイこそ緩めているものの、元の通りスーツを着てこちらに足早に歩いてくる。
 どうせならばネクタイは外してしまえばいいと自分でも思うのだが、日頃の生活習慣は変えられないらしく、無意識にネクタイを締めては後で緩めるということを、アキラ
は繰り返していた。アキラ自身にもある微かな不安定さは、ふとしたことで垣間見えているものの、社は違和感こそ覚えても気づけずにいる。
 彼とて人間である。いつも平然として見えても、精神的な負担は決して軽くない。だがアキラは何一つ表に出さず、普段通り社の前に立っていた。
「塔矢、進藤は?」
 傍に来たアキラは聞くまでもなく事情を察したのだろう、さりげなく女性に会釈しながら小声で社に答えた。
「書斎で待つように言ってある」
「そうか」
 社が頷くと、無視された形で佇んでいた女性スタッフは、取材をするなら今だとばかりに口を開く。
「ねぇ、君達はこれとは関係ないの?」
「ええ…ボク達は昨夜あそこで休んでいたので」
 答えながら二人が眼を向けた先にある、壊れたモデルルームを見て、女性スタッフは肩を軽く竦めた。
「残念ね、折角特ダネを掴んだと思ったのに」
「こんな時でも取材ですか?」
 日頃の品行方正で礼儀正しいイメージはどこにいったのか、不快さも露わに眉を顰めて問うアキラを見下ろすと、彼女は気負うでもなく胸を張り自然と頷く。
「ええ、こんな時だからこそ取材するのよ。私達が撮った映像や記録が、後に何かの形で役立つかもしれないでしょう?そのためにも取材をしなければならないわ」
 社はこんな返答が返ってくるとは思わず眼を見開いたが、アキラは無言のまま小さな溜息を吐いただけだった。
 アキラにとっては、どんな大義名分を掲げようとも、利益と恐怖とが混在するグロテスクな現実は変わらないように思えたのだ。
 彼女は二人の様子を見ても気分を害しはしなかった。二人の反応など、既に見慣れたもので気にすることもない。ただ自分達なりの信念に基づいて、行動するのみ
だから。それぞれがビデオとカメラで映像を撮り、無人の旅客機の中を歩き回っているクルーは三人の様子に気づきもせずに取材に夢中だった。
「あなた方がずっと取材をされていたのなら、アレがどうやって地球に来たか、東京や大阪などがどうなったか、ご存知じゃないですか?」
 アキラの問いに女性記者は踵を返して、機材の一つに電源を入れる。するとそれは鮮やかなカラーの動画を流しだした。
 まともな映像など二人にとっては随分と久しぶりで、新鮮に思えたが、流れている画像はテレビ番組のように気軽なものではなかった。
「奴らがエイリアンなのは知ってるわね。これは奴らがあの戦闘機械に乗る時のものよ、スローにするけど分かるかしら?」
 雷光がアスファルトを砕き、地面に落ちる様子を撮ったものだが、あの恐ろしい経験がなければ、何の変哲もない自然現象を撮ったものだとしか思わなかっただろう。
「ほら、ここ。カプセルみたいなものが見えるでしょう。これが奴らなのよ。あの中でカプセルから別の姿に変態するの」
 映像をコマ送りにする彼女の言うとおり、何か丸い物が見えて地面に吸い込まれていった。奴らは自分達の身体や物を極端に小さくする技術を持っているのか、或い
は他の方法を使っているのだろう。
「奴らの機械がいつから地球にあるのか分からないけど、隕石や彗星を介してこの星に落とし続けていたのだとしたら、結構な時間がかかっているんじゃないかしら?
一説には百万年とも言われてるわね」
 アキラや社にとっては、碁の神様が壮大な百万年計画を立てるのは構わないが、異星人のこんな迷惑な百万年計画など願い下げだった。
 尤も、奴らにとっては大事業と呼ぶほどのものではないかもしれない。地球から百万光年以上彼方からやってきたとするなら、機械が移動している間に地球では百万
年以上経っていてもおかしくないのだ。
 奴らの技術力ならば、昔の地球の姿を見ただけでおおよその進化を予測して兵器を作るなど大したことではないのだろう。
 百万光年以上の距離を一瞬で移動するのも造作ないかもしれない。どちらにしても母なる地球が危機に陥っていることには変わりない。
「でもどこから来たのかは私たちにも分からない。その代わり、あの機械についてなら多少のことは分かったわ」
 女性記者は別の映像を画面に呼び出して二人に見せた。戦闘機械の上空で飛んでいたフリスビーのような形をした攻撃機だった。
「この円盤タイプのものだけど……これは二つのタイプに別れるの。一つは母艦で直径三十キロにも及ぶ大型船。もう一つは小さくて小回りがきく戦闘機タイプね」
 画像が切り替わり、巨大な円盤がマンハッタン島と自由の女神の上空に鎮座している、まるで映画のような光景が映し出された。
「母艦はアメリカのニューヨークから動かないままらしいけど、これが気象を操って操縦者をポッドに乗せたのは間違いないわ。そして個々の機械に命令を下している
のもこの母艦よ」
 更に画面が変わり、アキラが最初に見た戦闘機械が現れる。
「このコンパスみたいな機械は歩兵のような陸戦タイプで、戦車に近い役割をしているの。海にも潜れちゃうらしいけど、今は関係ないわね。最近の奴らのやり方として
は、まず戦闘機で一発お見舞いして、次の掃討作戦を陸戦タイプで行っているようよ」
「最初ボクが見たのはこの地上戦用のものだけでした」
「やっぱりそうなの?最初は陸戦タイプのみだったのに、三日目くらいから戦闘機タイプが出てきたのよね。まるで数が足りないみたいに」
 圧倒的優位に運んでいる奴らに限って、『数が足りなくなる』ということがあるとは思えなかった。だがアキラには微かな違和感が確かにあった。
 それはとても漠然としたものだったけれど。


                                                                     7DAYS ACT4 水曜日(後編)7DAYS ACT4 水曜日(後編)7DAYS ACT4 水曜日(後編)7DAYS ACT4 水曜日(後編)7DAYS ACT4 水曜日(後編)   7DAYS ACT5 木曜日(後編)7DAYS ACT5 木曜日(後編)7DAYS ACT5 木曜日(後編)7DAYS ACT5 木曜日(後編)7DAYS ACT5 木曜日(後編)